2025年8月、SNSやニュースを賑わせているテーマがあります。
それは「二次創作」と「AI創作」の境界線です。
同じ「原作をもとにした創作」でも、なぜAIだけが強く批判されることがあるのか――。
今月に入り、複数の出来事が重なり、この議論が再び火を噴きました。
二次創作とAI創作の基本的な違い
二次創作とは、既存の作品やキャラクターをもとにしたファンアートや同人作品のこと。
多くの場合、権利者が「ガイドライン」で条件付きで許可を出しています。
たとえば「非営利に限る」「公式と誤認させない」「作者名や出典を表示」などです。
一方、AI創作は「学習」「生成」「流通」の各段階で、権利や倫理の問題が複雑に絡みます。
- 学習段階:日本の著作権法30条の4は「情報解析目的の複製」を認めていますが、無制限ではなく、利用方法や出力内容によって侵害になり得ます。
- 生成段階:特定の作家や公式の画風に酷似しすぎる場合、著作権やパブリシティの問題が生じる可能性があります。
- 流通段階:大量生成品がマーケットを埋め尽くす「粗製乱造問題」や、利用者体験の阻害が起こりやすいという懸念があります。
直近で議論が再燃した主な出来事
このテーマが8月に再燃したのは、以下の出来事が重なったためです。
- 7月18日発表
マーケット「BOOTH」が、AI生成による模倣や粗製乱造への対応を強化すると発表。
二次創作販売に関するルール強化が現実的な影響を与え始めました。
- 8月7日
読売新聞が、AI検索サービス「Perplexity」を著作権侵害で提訴。
AIによる「ただ乗り」問題が広く注目されました。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE10AM60Q4A211C2000000/
8月11日以降の森川ジョージ先生の発言
8月11日、漫画『はじめの一歩』の作者・森川ジョージ先生がX(旧Twitter)で、
「森川ジョージ風のオリジナル漫画をAIで作ってもいいか」という質問に答えました。
複数回やり取りを交わしたのち最終的な森川先生の回答は明快でした。
ではアウトと言っておきます。 著作権者にそれを直言して許諾される確率は低いですよ。
この一連の流れは「AI模倣」への否定であり、AIそのものの全否定ではありません。
しかし、SNS上では文脈を外れて拡散され、賛否両論や誹謗中傷も発生。
結果として、AIと二次創作の是非論争が再び熱を帯びました。
論点として浮かび上がったこと
今回の一連の動きから、次のような論点が見えてきます。
- 二次創作はガイドラインで「条件付き許可」があるが、AIは前例が少ない
- AIは“学習素材の取得”や“大量生成”など、従来の二次創作にないリスクを伴う
- クリエイターの画風模倣は、ファン層や作者本人への心理的負担になることもある
- プラットフォーム側が規制を強める中で、創作活動の自由度は今後変化していく可能性が高い
これから創作活動をする人が気をつけたいこと
- 対象作品の最新ガイドラインを確認する
AI使用の可否や明示義務など、公式ルールは作品ごとに異なります。 - 利用するプラットフォームの規約を確認する
BOOTHなどではAI由来作品への規制が進んでいます。 - 誤認防止と透明性を意識する
公式と誤解させない表示、AI使用の明記は重要です。 - 法的グレーゾーンを過信しない
学習段階が合法でも、出力や公開方法によって侵害になる場合があります。
おわりに
AIは新しい表現の可能性を広げる一方で、既存の文化やコミュニティとの摩擦も生み出します。
特に二次創作の世界では、「お互いの暗黙のルール」が長く守られてきました。
そこにAIが入ってきたことで、ルールの見直しや価値観の衝突が避けられなくなっています。
今回の森川ジョージ先生の発言や、各社・各プラットフォームの動きは、
この問題が「一部のネットの論争」ではなく、今後の創作環境全体に関わるテーマであることを示しています。
創作する側も、楽しむ側も、最新のルールとマナーを知り、歩み寄る姿勢が求められている時期です。
最後に、本記事では概要をお伝えしましたが、森川ジョージ先生の発言やその背景、SNSでの反応については、こちらの特集記事で詳しく解説しています。気になる方は是非、チェックしてみてください。https://ai-workstudio.site/?p=2936